欠陥住宅と住宅業界における職人さんの現実

2024-12-06

家を建てるとき、「自分の家が欠陥住宅になる」と想像する人はほとんどいないでしょう。

しかし、実際には欠陥住宅が社会問題として取り上げられることが少なくありません。
その原因には、住宅業界の構造や職人さんの働く環境、そして現場の人手不足など、さまざまな問題が絡み合っています。

たとえば、YouTubeには、大手ハウスメーカー(以下HM)が建てた住宅で発生した雨漏り問題を検証した動画が公開されています。

参考動画: 42歳現役キックボクサー駿太の検証ch【雨漏り問題】内壁をバラしたら錆とカビと水濡れがありました。 

大手のHMは品質管理に定評があるとされていますが、それでもこのような問題が起きることに驚いた人も多いでしょう。

この事例では、防水シートの貼り方を間違えてしまったことが原因でした。正しい順番で貼らなかったため、雨水が室内に入り込んでしまったのです。このような初歩的なミスが原因で問題が起きました。


<防水紙(銀色のシート)は、下から上へ順に張り重ねます。>

さらに、この施工を担当したのは外国人作業者であったとされています。外国人だから問題というわけではなく、経験の少ない作業者への指導やチェックが十分でなかったこと、そしてそれを見逃した管理体制が問題の本質です。

こういった欠陥は、本来なら次のような課題にしっかり対応すれば防げたはずです。以下に、こうした問題の背景となる課題を整理しました。

1. 職人の知識不足
家を正しく建てるためには、幅広い知識と豊富な経験が必要です。昔は「親方」のもとで経験を積みながら成長する仕組みがありましたが、今ではそうした育て方が少なくなっています。そのため、経験不足の職人によるミスが増えています。

2. 責任者の確認不足
経験不足の職人のミスは、本来は親方や責任者がそれをチェックして修正するべきです。しかし、人手不足や低賃金の影響で確認や指導が不十分になることがあります。

3. 現場監督の管理不足
建築会社(工務店やハウスメーカー)の現場監督は、工事が正しく行われているか確認することも大切な仕事のひとつです。
1人の監督が複数の工事現場を担当することが一般的です。すべての作業を十分に確認できないことがあり、ミスが見逃される原因になっています。

4. 職人同士の連携不足
家を建てるにはいろいろな職人さんが関わります。例えば、水道工事をする人や、大工さん、板金工事をする人などです。職人さん同士が作業を確認し合うことでミスを防ぐことができます。
良い建築会社の現場では、職人さんの間で次のような会話が交わされます
「ここ大丈夫?」「これを進めたら後で直せなくなるけどいい?」
また、職人さんが現場監督に「ここ、何かおかしいけど問題ないですか?」と報告することもあります。
しかし、忙しすぎたり、職人さん同士の関係が薄かったりすると、こうしたコミュニケーションがうまくいかず、ミスがそのままになってしまうことがあります。

5. 工事監理の不足
「工事監理」とは、建築士が第三者の立場で工事が適切に行われているかを確認することです。法律で義務付けられており、建築士は工事の品質を確保するうえで重要な役割を果たします。
しかし、この工事監理がしっかり行われないと、ミスが見逃されることがあります。工務店やHMの家づくりでは、自社で工事監理を行うため、形式的になる可能性があります。

 職人さんの現状:賃金の問題と職人不足


家を建てるうえで欠かせない存在が大工さんです。

しかし、現代の大工さんを取り巻く環境はとても厳しいものとなっています。たとえば、大手HMで働く大工さんの日給は、約18,600円程度と言われています。

また、常用ではなく請負で仕事をする場合、一軒の家を20日以内に仕上げなければ、十分な収入を得ることが難しいという厳しい条件の中で働いています。さらに、材料は支給されるものの、使用する道具や車両は自費で用意しなければならず、これらの費用も大工さん自身の負担になります。

このような状況から、大工を目指す若い世代が減少し、職人の数がますます少なくなっています。その結果、経験の浅い職人が増加し、熟練した職人の不足が深刻化しています。加えて、工事費の値引き要求が高まる中、短期間での工事完了を求められることが多く、採算が取れなくなるケースも増えています。

このような背景から、工事の質が低下し、欠陥住宅の増加を招く一因となっています。

参考動画: 職人世界の裏側チャンネル 一条の大工さんの単価教えてくれた  

 信頼できる建築会社(工務店)を選ぶ大切さ


欠陥住宅を防ぐためには、信頼できる工務店を選ぶことが大切です。
職人への適切な報酬や教育を行っている工務店は、施工の質が高く、安心感があります。

工務店やHMを選ぶときは、CMや広告のイメージで決めることなく、口コミや職人さんの働く環境にも注目してください。

とは言え、どんな職人さんがどのような環境で仕事をしているかを知るのは難しいと思いますが、お客さんが支払う金額のうち、どれほどの金額が職人さんにわたっているか、想像することは出来ると思います。

私たち設計事務所は、良い建築会社(工務店)を知っています。それは一般の方にとって馴染みのない会社であることが殆どです。宣伝費を抑える一方で、職人さんへの報酬を手厚くすることで高い施工品質を実現しているのです。

 建築士と設計事務所の役割


建築士は、家のデザインだけでなく、工事が適切に進んでいるかを確認し、品質を守る重要な役割を担います。建築士による工事監理が不十分であれば、どれほど優れた設計であっても、その品質を損なう恐れがあります。

ハウスメーカーや工務店の家づくりでは、工事監理は工事会社が行いますが、設計事務所の家づくりでは、工事会社とは別の立場で工事監理が行われるため、より高い品質と安全性が確保されます。

欠陥住宅を防ぎ、満足度の高い家づくりを目指す上で、設計事務所を選ぶことは有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

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  この記事を書いた人 

  原田 久( 建築家 / 一級建築士 )

有限会社 ディクタ建築事務所 代表取締役

愛知県北設楽郡設楽町出身
豊田工業高等専門学校建築学科卒業後、大阪の建築家・出江寛氏に師事。
出江事務所退社後、ハウスメーカー、ゼネコンを経て1998年設計事務所開設。
豊橋・豊川・蒲郡・新城等の愛知県三河地域で、住宅専門の設計事務所として
クライアントと一緒に楽しく丁寧な家づくりをしています。

1998~2004 豊田高専建築学科 非常勤講師
1998~2001 利幸学園 中部ビジネスデザインカレジ インテリア科 非常勤講師

ブログ(プロジェクト進行状況の紹介)  https://www.dikta.jp/blog/
コラム(家づくり全般について)     https://www.dikta.jp/column.html 

豊川市, 愛知県, JPのHouzz登録専門家原田久クライアント様から、家づくりSNS「HOUZZ」にレビューを頂いてます。
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