家を訪ねて。一年目のインタビュー 南設の家@新城市
山間の集落で伸び伸び暮らすフラットハウス
山あいの平屋に4人暮らし。はだしで元気に遊ぶ2人のお子さんの足を、杉板のフローリングがやさしく受け止めています。建物南側の70坪の庭は、竣工後、お施主さん自身が芝生を敷き、木を植えて、小さな公園のよう。その西側の畑ではナスやトマトが育っています。リビング・ダイニングの大きな窓からその緑を眺めながら、ディクタとの家づくりについて伺いました。 (取材・構成 本間徳子)
  • 用途専用住宅(単世帯)
  • 構成-
  • 構造木造在来工法
Q1.なぜ家づくりを設計事務所に依頼したのですか。その中でもディクタを選んだ理由は?

施主

何かにつけ「人と一緒はいや」という性分で、家も「自分たちのつくりたいものを」という思いがありました。ハウスメーカーの展示場も見には行ったのですが「自分たちにはちょっと違うな」と。かといって、工務店に知り合いもいないし……。そもそも、「家を建てよう」とはなったものの、土地探し、お金の算段など、何からすればいいかわからない。それで、ともかく一度ディクタに相談に行ってみようと思いました。その少し前に、たまたまブログで原田さんと知り合いになっていたんです。好みが自分に近いなと思っていたし、プロフィールを見たら出身地が同じで、親近感を持っていました。

ディクタとの最初の相談では、予算が限られていたこともあり、「(設計事務所を入れずに)工務店に直接依頼するほうがいい家ができるかもしれない」と、工務店を紹介してくれました。その工務店の担当者の方が、特に資金繰りについて、親身に、的確にアドバイスをくれました。家づくりは大きなお金が動くので、これはとても有難かったです。「ディクタに依頼しても予算内に収まりそう」という見通しが立ち、ほどなく土地も見つかりました。ディクタに設計を、その工務店に施工を依頼する、という前提でもう一度、相談に乗ってもらい、「ここなら間違いない」と夫婦で確信しました。

家を訪ねて。一年目のインタビュー 南設の家@新城市
Q2.家づくりの過程で、不安はありませんでしたか。「予算オーバーするのでは」とか、「建築家のデザインを押し付けられるのでは」とか。

施主

予算については、ローンを組んだ時点で上限が決まり、あとはどうやってその金額に収めるかを考えればよかったので、不安はありませんでした。

デザインについても、不安より楽しみのほうが大きかったです。最初に渡された『ヒアリングシート』に、自分たちが好きなキーワードを書きました。それがディクタというフィルターを通って、どんな提案が上がってくるのか、とても楽しみでした。「いい意味で期待を裏切ってくれるんじゃないか」と思っていて、実際にそうなりました。

原田

キーワードの中に「アメリカ」っていうのがあって、「Diktaは和風がベースの事務所なのに本当にウチで良いの?!」と戸惑いました。スタッフの栗山と一緒に「アメリカってどんなんやろ?」と慌てて資料を調べたり。

施主

アメリカのレンガハウスのようなテイストが好きで。キーワードはほかにもたくさん書いています。それで、提案されたものを見て「ちょっと違う」と思えば、それを話し合って、詰めて……。とはいっても、「自分のイメージと全然違う」ということはなかったですね。ただ、打ち合わせは大変だったな、という思い出があります。自分たちが忙しい時期とたまたま重なってしまって。

原田

はっきりしたピンポイントの好みをお持ちですよね。興味の幅は広くて、「じゃあこの方向でいいかな」と思って提案すると、ちょっとしたずれで「ダメ」と。そういうことが何度かありました(笑)。

施主

そうそう(笑)。自分の好きな単語がいろいろあるんですよ。それを整理せずにぽんと伝えて、それでディクタから出てきたものを見て、審査するというわけじゃないけど、「これはいけるな」、「これはちょっと違うな」とやりとりを重ねていく。そういうのが面白かったです。そうして一つのかたちにまとまったのがこの家です。

Q3.プランニングにエネルギーをかけて家づくりをされたのですね。できあがった時は、いかがでしたか。

施主

嬉しかったです、とても。でも「これで終わっちゃうのか」というさみしさもありました。「家づくり」という過程そのものに興味があって、楽しんでいたので。

原田

庭と家具は後からご自分でつくると伺っていたので、その完成をとても楽しみにしていました。

施主

以前は、週末になると東京に出かけたりしていたんですが、今はほとんど毎週、庭づくりをしています。柵を立てたり、子どもにも手伝わせて芝生を敷いたり、木を植えたり……。冬になるとやることがなくなって、さみしいです(笑)。

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Q4.1年間、住んでみていかがですか。

施主

満足しています。細かい部分では、洗面所の周りをクロス張りにしちゃったんですが、水跳ねが気になるので、いずれタイルか何かにしようかな、と……。あと、気になるということではないんですが、壁の色などで、「この色でよかったのかな」とふと思うことがありますね。いったん決めたら、なかなか変えられないので。
玄関を入って正面に見えるグリーンの壁は、この家の象徴だと思っています。原田さんと一緒に塗ったんですよね、汗だくになって。

原田

あれ楽しかったですね。夏で、エアコンもまだついてなくて、暑かったけど。お子さんに「(ペイントを)こぼしちゃだめだよ」って何度も言ってたのに、僕がこぼしちゃって(笑)。

施主

そうでしたね(笑)。色に飽きたら、また自分で塗ろうかなと思っています。
この家には、とにかく満足しちゃってますね。満足していなかったら、いろいろ不満もあると思うんですけど、ないんです。

原田

よかったです。庭が完成したらまた見せてください。とても楽しみにしています。

施主

ええ、ぜひ、いらしてください。まだまだ手を入れていきますので。

原田

今日は、改めてお話を伺えて、嬉しかったです。どうもありがとうございました。

家を訪ねて。一年目のインタビュー 南設の家@新城市
<設計室にて>

この「南設の家」を今振り返って、設計側として最も難しかったのは、敷地が広い(200坪超)ことだったと思います。ある程度までの敷地面積なら、建物の位置や間取りは、おのずと決まってくる部分があります。でも敷地が広いと、そのどこに、どんな形の建物を、どんな向きで建てるのか、いくらでも考えることが可能です。決め手がない。けれど、最終的には1つに決めなければいけない。プレゼン案に至るまで、「これもいける、あれも悪くない」と、かなり試行錯誤がありました。さらに、家づくりが実際に動き始めてから、思いがけず土地をかさ上げできることになり、お施主さんと相談してプランを大きく変更しています。無数にある選択肢の中から最良の答えを考え続けていくのは、お施主さんにとっても大変な作業だったと思います。その大変な過程を一緒に楽しんでいただけたことを、ありがたく思います。<原田>

プランニングでは、「せっかくの広さを壊さないように、窮屈にならないように」と心がけました。まず浮かんだのは、「リビングでお茶を飲みながらゆったり庭を眺めている」という光景です。でも庭が大きすぎると、メンテナンスが大変になります。庭の手入れも楽しめる家を、と考えた結果、建物北側を駐車スペースに、南側を庭と畑にする、という案がまとまりました。私たちの予想以上に楽しんで暮らしていらっしゃる様子に、設計者として嬉しさひとしおです。<栗山>

豊橋、豊川、蒲郡、岡崎、豊田、設計事務所と創る注文住宅|有限会社 ディクタ建築事務所

有限会社 ディクタ建築事務所 / Dikta architects office

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