他社作成の詳細見積り査定について(相談事例)

2019-02-04 · 建築相談のこと

先日、「工務店から提出された詳細見積りについて、その金額が適正かどうか相談会で判断して欲しい」
とのお電話をいただきました。結論から言うと、その類の相談にお答えすることは難しいです。

その理由は二つあります。

まず一つ目。

自分が設計した建物なら、内容を理解してるので、見積り内容の判断は比較的容易です。
対して、他人が設計した建物の場合、その仕様、工法、納まりが自分の使わないものであることが多く、
見積り精査に多くの時間と労力が必要です。

例えばタイル。5000円/㎡のタイルもあれば10万円/㎡以上のものもあります。
外壁の塗り壁調仕上げでも下地の違いでコストが大きく変わりますし、
キッチンお風呂などは各社から様々なラインナップがあり、グレードによって値引率も変わります。

梁や柱などの組み方が違えばプレカットの単価も変ります。
水平梁に束立ての小屋組みより、斜めの登梁による架構の方がプレカット単価は高くなります。

大工さんに技術力が求められる仕事と、そうでない場合とでは大工単価が違ってきますし、
工事が複雑になると工事に必要な日数が多くなり、その分費用も多く必要です。

このような様々な条件や要素を踏まえたうえで作成された見積りを、
わずか1~2時間の建築相談の場で判断するのは無理があるのです。



<大工さんが作る家具と家具屋さんが作る家具では、仕上り・精度そしてコストが変わります>


二つ目の理由として、他の会社の仕事について、安易に判断することはしてはならないということ。

作り手側が「誠実な仕事をする為にこの金額で」とギリギリの思いで提示した(可能性のある)見積りについて、
事情を知らない私が安易にジャッジを下すことは控えるべきと思うのです。

自分が設計したものでも、自分の予想と異なる見積りに「こんなに掛かるか?」といった感想を抱くことがあり、
工務店に説明を求めることがあります。説明を受けてようやく納得するに至るわけですが、
自らが手がけた物件でもそういったことがあるくらいですので、他人の設計した建物ならなお更です。

誠実に仕事したいと思えばそれなりの時間と人材が必要で、それはコストに反映されます。
経緯を知らない第三者が高い、安いと安易に判断することは避けるべきだと考えます。


それではどうすれば良いのかを考えてみます。

見積りが高くなるには相応の理由が必ずあります。

納得できない項目について、ひとつひとつ説明を求め、その部分にそこまで費用を掛けられないと思えば、
仕様を変更してコストを抑える。どうしてもやりたい項目は、その分についての費用を払う。

「全てが高い」「総合的に納得できない」と感じていたとするならば、そこに依頼することが間違いということ。
結局、見積りは業者の家づくりに対するスタンスそのものなのです。

 

  この記事を書いた人 

  原田 久( 建築家 / 一級建築士 )

有限会社 ディクタ建築事務所 代表取締役

愛知県北設楽郡設楽町出身
豊田工業高等専門学校建築学科卒業後、大阪の建築家・出江寛氏に師事。
出江事務所退社後、ハウスメーカー、ゼネコンを経て1998年設計事務所開設。
豊橋・豊川・蒲郡・新城等の愛知県三河地域で、住宅専門の設計事務所として
クライアントと一緒に楽しく丁寧な家づくりをしています。

1998~2004 豊田高専建築学科 非常勤講師
1998~2001 利幸学園 中部ビジネスデザインカレジ インテリア科 非常勤講師

ブログ(プロジェクト進行状況の紹介)  https://www.dikta.jp/blog/
コラム(家づくり全般について)     https://www.dikta.jp/column.html 

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