身内に腕の良い大工さんがいらっしゃって、その方が施工管理をするので
図面のみ依頼出来ないかとのメール相談をいただきました。
私は図面のみの仕事はしてませんので、その理由をご説明し
やるやらないはともかく相談は無料で承っている旨の返信をしたところ
相談会にお越しいただくことに。
そのことがあって、図面のみの仕事と、昔かたぎの大工さんとの仕事について、
改めて考えを整理してみました。
■ 図面のみのご依頼について
不思議なもので、例え同じ設計図を元に同じ素材を使って、同じ工務店が施工したとしても、
設計者によって出来る建物はまったく違ったものになります。
また、同じ建築家の作品でも、担当者によって違ったりすることもあります。
図面だけでは、納まり、色、素材感、艶、木目、質感などなど、伝えられないことがたくさんありまして、
設計者が自分好みに仕上げたいと思えば、現場に足繁く通って細かいニュアンスまで伝えなければなりません。
私が現場に足繁く通って、監督さんや職人さんと打ち合せする理由はここにあります。
<現場でミリ単位の打ち合せを行ないます。写真は家具扉の手掛け部分の打ち合せ風景です>
■ 図面のみの仕事に熱意を持って取り組む自信は...
図面を納品すれば終わりというのでは、家づくりで一番楽しい所を奪われてしまいます。
このことを大工さんの仕事に置き換えて説明しますと・・・
大工さんがお客様から依頼され、お客様と間取りの打ち合せを行います。間取りが決まり、柱や梁などの木材を刻んだり、
諸々の段取りを済ませて無事に上棟。さぁこれからと思ったら「あとは自分たちで出来るから来なくても大丈夫です。」
と言われるようなもの。
最後まで家づくりに関わらせてもらえるからこそ、思いを込めた図面が書けると思うのです。
■ 大工の棟梁との家づくりについて
施工サイドと私たち設計者とでは、当たり前に思うことに誤差が有ります。
設計事務所に慣れた建設会社でも、初めての仕事では「双方の当たり前の誤差」による
思いがけない施工に直面することがあります。
設計事務所に慣れてない大工さんの場合、この「当たり前の誤差」が大きくなりがちで、
私たちの許容範囲を超える事態が多くなりそうです。
棟梁と設計者で意見が違ったとき、その善し悪しがはっきりする時はいいのですが、
どちらの意見も正しいということがあります。
棟梁の信念から外れたものであっても、設計者の意向を受け入れてもらえるかどうかが、
大工さんと家づくりを進める条件となります。
<設計図に基づいて現場サイドで施工図を作成。工事前に確認します。写真は電気の施工図です>
■ 耐震偽装以降、設計事務所に対する行政の要求が厳しくなっていること
耐震偽装以降、設計事務所や建築士の業務に対する行政の要求が厳しくなっています。
ひと昔前でしたら設計事務所が大工さんと口頭で打ち合せしながら工事を進めても問題なかったのですが、
今は書類で現場の管理を行なう方向で建築行政がなされております。
お客様や設計サイドからすれば安心材料なのですが、施工する側からすると、これはかなりの負担。
直に手を動かす大工さんが国交省の求める書類や写真をまとめるのは、その種類と量を揃えることは
とてつもなく大変な作業となります。
特に設計事務所の住宅はフルオーダーですので、現場をマネージメントする監督なしには不可能なのかなと
改めて感じているところです。