家づくりはじめてもう一年ですね、と話したところ、 「近所の家はあっという間に完成してましたよ」と。 隣にも売り地があるので、それにも抜かれちゃうかもしれませんね...
私は他社さんと比べて図面を書くスピードが遅いようです。 お客さんからすると、もっと早くと思うでしょうね。
私たちの事務所では、基本設計がまとまった後の、実施設計に3ヶ月~4ヶ月掛けていますが、 知り合いの設計事務所では、住宅なら2~3週間で終わらせてしまうんだそうです。
「今、実施2本やってるんで・・・」
いっぽん、にほん・・・と、あたかも部活のダッシュのような単位で、家づくりについて話ていましたが、 その言葉の軽さに、ある種の衝撃と愕然とした思いでその話を聞いておりました。
以来、半年ほど、このことについて考えております。
私の場合、スピードが遅いというより、一度書いた図面を何度も何度も変更や修正を重ねて 図面の精度と空間の熟度を高める為に時間を費やしているというのが正しいところ。
食い違いの少ない整合性の高い図面は、現場での後戻りがなくなります。 結果、良い家づくりにつながると考えています。
そして、後戻りの少ない図面を書くことで「この事務所なら余分な作業が少ないから、経費はこのくらいに・・」と、 コスト的なメリットにつながるはずと期待してのこと。
反対に「あの事務所は、どれだけ後戻りがあるか分からない・・・」と思われたら余分な経費を計上されるということです。
実施作業のイメージとしては、渦の外側の大きな所から中心に向かって、螺旋状に何周も周回しながら図面確認&修正。 周回する度に問題点を解決し、設計内容をブラッシュアップ。同時に図面相互の食い違いを直していきます。
図面上の全ての課題が収束し、海中にストンと沈んで渦が消える時に実施設計が完了する感じです。
実施設計が終わった日は、深夜の事務所で2時間くらい、仕上がったばかりの図面を眺めながら 「よー書いたなー」とやりきった感に浸っています。
そうして仕上がった図面も、もれなく予算オーバーしてますので、 3週間後には、赤ペンで修正されまくる宿命にあるのです。
「多米の家」は今、絶賛赤ペン修正中です。
2014.10.29 ディクタ建築事務所 原田久